非言語で測定も表情より容易な身体の着座姿勢に焦点をあて、他者による感情判断の構造を分析・モデル化した。日本人による着座姿勢に対して、20代の日本人観察者28名と20代の英国人観察者21名による感情判断の実験を行い、相違点を分析した。その結果、日本人は「覚醒度」、「快適度」、「支配度」という3種類の感情判断因子、英国人は「覚醒度」、「快適度」の2種類の感情判断因子を抽出した。よって、顔の表情や立位姿勢の感情判断の研究でも抽出された「覚醒度」、「快適度」については、着座姿勢でも同様な感情構造があることが分かった。一方、日本人観察者はパーソナルスペースに関連する「支配度」判断を行っている一方、英国人観察者は、そのような感情判断をしていないことが分かった。よって、同じ着座姿勢でも、文化的な背景により感情判断が異なることが示唆され、感情のモデル化において注意が必要であることが分かった。 また、圧力センサや加速度センサを用いて、因子と身体部位およびセンサ値との関係を分析した結果、感情判断となる身体状態は、「覚醒度」は主に上体および首の角度、腕の状態、「快適度」は主に脚および首の角度、腕の状態、「支配度」は主に腕の状態および臀部の位置、脚組、首の角度と関係することが示唆された。 センサを用いた他者による実時間感情判断推定システムを構築した結果、「驚いた」、「喜んだ」、「興奮した」などの「覚醒度」の高い感情語の精度が80%の正答率となり、「悩んだ」、「悲しんだ」などの「快適度」が低い感情語、および、「悩んだ」、「悲しんだ」などの受動的な「支配度」は正答率60、70%となった。その他の感情語は推定が困難であった。ただ、正答率の精度が劣る感情語は、感情判断に個人差があることが分かり、観察者と評価者を同一人物にすれば正答率が上がると考えられるが、一般化が今後の課題となった。
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