画像機器開発や画像処理/符号化方式の開発において、画像評価法は不可欠である。これまで用いられてきた画質評価のための客観評価値はPSNR(Peak Signal to Noise Ratio)であるが、例えば同じPSNR値であっても画像が異なると視覚的には同じ画質とは判断できない。現状ではPSNRは画質評価の参考になるが、視覚的な意味で絶対的な評価と成り得ない。本研究では、画像の種類や劣化の種類によって、主観評価を基準とした場合にPSNRがどの程度揺らぐかを明らかにすることが目的となる。そのために視覚的に劣化を感じる限界である劣化知覚閾値DPT(Deterioration Perception Threshold)をPSNRで定義し、主観評価実験により画像の種類や劣化の種類を変化させてDPTを求める。DPTは主観評価の基準となるPSNRであるから、画像の種類や劣化の種類とDPTの関係を明らかにすれば、目的が達する。 平成22年度は劣化要因をガウス性加法雑音に限定して、画像の種類とDPTとの関連性を調査・検討した。その結果、エッジ量で画像を種別するとして、エッジ量とDPTとの間に相関性を見出した(エッジ量の多い画像ほど、DPTは小さな値となる)。また、並行して、劣化画像を低頻度刺激とするオドボール課題によって生じる脳波(事象関連電位:DPT)の波形特徴であるP300の潜時とピークの高さと被験者に呈示する劣化画像の劣化度との相関を調査した。その結果、呈示する画像の劣化度が高いほど、潜時は短く、ピークの高さが高くなることが明らかになった。 なお、平成23年度以降、画像の解像度やコントラストの変化がDPTに及ぼす影響を調査するため、画像のコントラスト変換に関わる方式の開発も行った。
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