紙面の文字情報は、印刷に適した美しく読みやすいフォントを用い洗練された文字レイアウト技術によってユーザに提供されているものが多い。しかしながら、日常生活への浸透が急速に続くパソコン(PC)や携帯電話、デジタルテレビ(DTV)などの画面から得られる文字情報は、画面表示に適した美しく読みやすいフォントが少なく、文字レイアウト技術も未成熟なため、ユーザに紙面のような読みやすい文字情報を提供しているとは言えない。また、限られた画面サイズでは紙面と比べ一度に表示できる文字情報量の制約が大きくなり、情報の一覧性が大きく損なわれる。 本研究では、画面表示専用に研究開発したフォント技術をベースに、ユーザのライフスタイルを考慮し、ユーザの視覚特性ならびに表示デバイスとの視距離、見る位置の変化に合わせて、リアルタイムで文字を個別に変形しレイアウトすることで、情報量を増やし、美しく読みやすい文字レイアウトをユーザに提供する基盤技術の構築を目的としている。 平成22年度では、文字の見やすさにおいて、新たに「文字明度」が大きく影響することが判明した(現在、論文執筆中)。すでに明らかになっている「文字重心」とともに、文字の見やすさを評価するための実用的な指標が明らかになった。 さらに、モーションキャプチャーを使ってユーザの目の位置と表示デバイスとの距離、角度を自動的に計測する環境を構築した。これにより、変形率の違う文字の組み合わせによる膨大な評価パターンを使っての計測が、短時間で行えるようになった。
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