本研究当初より続けてきた携帯電話やTVに表示されるフォントの可読性に関わる文字変形、文字重心、文字明度に関する研究のまとめを行った。 しかしながら、フォントを表示する環境は、大型化と低価格化が急速に進むFPD(Flat Panel Display)によって,天気・交通・災害などの情報を表示するために電子看板に搭載され、駅や道路などに多く設置されるようになってきた。不特定多数の人々が様々な距離から見る電子看板のような表示デバイスの場合、可読性の高い文字表示のための指標がないため、視認性が悪く文字が読み取りにくいレイアウトが多く見受けられる。 そこで、人から離れた場所に設置された電子看板などにおいて、可読性の高い表示文字の大きさを決めるための指標策定が、表示デバイスにおける文字レイアウト可読性向上化技術の研究においてさらに必要となった。 人が離れたところにある物を見る場合には,大きさの錯視効果によって知覚的な大きさと幾何光学的な大きさに乖離が生じることが明らかにされている。しかしながら、これらの知見は幾何学図形での実験が主で、視距離が文字の大きさ知覚に及ぼす影響は明らかにされていない。 本研究の最終年度では、視距離による文字の知覚的大きさの計測を行い,文字の大きさにおける錯視効果について視距離と知覚的文字の大きさの分析を行い、視距離ならびに被験者によって知覚的文字の大きさに有意な違いがあることを明らかにした。さらに、モーションキャプチャーを用いた計測法を考案し、計測にかかる時間コストの大幅な削減を達成した。
|