味覚センサの研究は,近年精力的に進められている。当該研究による味覚センサシステムは従来の手法とは異なり,極力メンテナンスフリーとなる物理化学分析機器を採用して,味覚センシングシステムの開発を目指している。この研究を推進することにより、脂質を含有した人工膜による味認識装置とデータを比較しつつ、より簡易なシステム開発への展望が拓ける。採用した分析機器は、再現性がよく,高感度かつリアルタイムな測定を行える。また,測定原理の異なる機器からの同時に計測されたデータを融合,すなわちセンサフュージョンを行うことで,単一のセンサからは得られない高度な味の認識判断機能を工学的に再現できる可能性があり,味測定技術への新たな提案となる。以下に本年度邁進した研究を記載する。前年度の研究を継続した。 (1)センサをアレイ化し集積に向けた検討 → 前年度得られた成果をもとに,味覚測定システムのターゲット食品を絞り,それに必要な分析機器の集積を行った。 (2)測定された多種センサの応答パターンによる識別の検討 → 上記(1)で得られたセンサデータの解析方法,具体的には多変量解析・自己組織化ニューラルネットワークといった様々なパターン認識法によるセンサ出力の解析方法を検討した。 (3)食品産業に向けたシステム応用の可能性について → 味センサの開発には,感性工学的な情報処理手法が大変有用である。(1),(2)から得られたデータに対して,人の官能検査によるデータとのマッチングを行い,種々の食品・飲料の製造工程管理および品質管理に有効なセンサシステムの検討を行った。
|