研究概要 |
研究対象[(1)画像(2)金融市場(3)群れシミュレーション]のそれぞれに対する研究成果を下記に述べる. (1)画像:事後確率が正規分布でない場合のベイズ推定構成の第一歩として,ランジュバン方程式からの長時間サンプリングによるベイズ推定値の構成方法を検討した.この方法により,従来のボルツマン分布を事後確率とする推定値をMCMC法と同様に求めることができた.しかし,計算時間についてMCMC法との比較を行った結果,提案方法は必ずしも処理時間を短縮できないこともわかり,処理時間向上が残された課題となった.次年度以降は,この方法を拡張し,任意の事後分布を構築するランジュバン方程式について議論を進め,自然画像をより良く再現するベイズ画像推定の枠組みを探って行く. (2)金融データ:ダブルオークション市場におけるBid-Askスプレッドの統計的性質が,相関関数や応答関数などの動的マクロ量の振る舞いに与える影響を調べ,既存のMadhavan-Richardson-Roomans理論では説明できない変動型Bid-Askスプレッドを持つ市場の統計的性質を説明するミクロなエージェントモデルを構築し,実データをよりよく説明できた.また,昨今の我が国で問題となっている労働市場に関し,そこでフィリップス曲線を再構成するミクロなモデルを提案し,限定的ではあるが,実データから示唆される我が国の曲線を再現できた. (3)群れシミュレーション:BOIDSにおける相互作用を変数にもつコストを異方性指標に選んだ最適化問題を考え,それを遺伝的アルゴリズムにより最適化することで,最適なBOIDSを構築する方法論を提案した.また,群れを構1成する一個体が視野範囲の他個体と相互作用する場合,視野範囲にはよらず一定個体数と相互作用する場合の両者を比較し,後者がより実測データを説明することを明らかにした. 上記以外のトピックスにおいてもいくつかの意義ある成果が得られた(研究発表参照).
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