本年度においては、大規模かつ複雑な問題のための進化計算手法の開発、およびメニーコアアーキテクチャにおける大規模並列実装の両面から研究を行った。 まず、組み合わせ最適化問題として有名な問題の一つである巡回セールスマン問題において、百万都市レベルの超大規模問題の解決を目指した手法の開発を行った。具体的にはZoning Crossoverと呼ばれる部分領域情報に基づく部分経路の生成手法を導入した交叉手法を開発することで、大規模な巡回セールスマン問題を進化計算による効率的に解くことを可能とした。 さらに、現実の設計問題等を解くために必要となる、整数および実数の変数が混在した非線形計画問題の解法として、進化計算手法を適用するための研究を行った。具体的には、広範囲の実数空間を部分空間に分割し、その探索の精度をバイナリ型の遺伝的アルゴリズムにより動的に制御しながら探索をするBR-GAと呼ばれる手法、適応的に精度を制御するAdaptive Resolution GAと呼ばれる手法を開発し、各種の代表的なベンチマーク問題において従来手法と比較した優位性を検証している。 メニーコアアーキテクチャの実装に関しては、GPGPUのフレームワークであるCUDAを用いた実装を試みている。具体例としては、薬剤の構造を自動的に最適化する手法であるde novo Ligand Dockingにおいて、そのエネルギー計算に大量の計算量を要するため、CUDAによる大規模並列実装を行うことで、従来のCPUによる実装では現実的な時間で解を得られなかったところ、数日程度で必要な薬剤の構造を得ることに成功したところである。
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