研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き,高次統計量カーネルを画像分類や類似度評価に応用する際の基礎的な条件を主に計算機実験から明らかにすることを行った.画像の類似度指標として同カーネルを用いる場合について注目し,徐々に画像変動を大きくしていった場合の指標の変動特性について実験的に調査した.その結果,高次統計量カーネルにおいては,回転,拡大縮小,ノイズ付加等の一般的な画像変動に対して,カーネルの次数が高くなるにつれて類似度の選択性が高まることが明らかとなり,一般に用いられている多項式,RBFなどのカーネル関数に比べて,画像の変動に対する感度を制御しやすいという利点があることが明らかになった.この成果は研究会において報告を行っており,今後本研究の目的の一つである5次を超える高次のカーネルの特性についてさらに検証を進め,国際学会などに報告する予定である.画像の内容検索系に関しては,利用者が問い合わせ画像をスケッチとして入力する場合の細線化アルゴリズムの検討を加えた.細線化の際に発生するノイズが最小となるよう適応的にGaussianスケーリング(ぼかし)と細線化を組み合わせて用いることを提案し,様々なタイプ音の画像に対してノイズを抑えた細線化が可能となることを示し,研究会にて報告した.この成果は最終的な画像内容検索系の特に問い合わせ画像の入力部分のフィルタ処理の1つとして用い,高次統計量カーネルを用いた画像内容検索の枠組みの一部として組み入れていく計画である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的としている(1)高次統計量カーネルを画像の特徴化に用いる際の条件の明確化(2)従来用いられていない高次数の特徴量に基づく画像分類の枠組の構築と評価(3)局所高次統計量に基づく領域類似度基準を利用した画像内容検索の枠組の構築と評価,のうち,(1),(2)はほぼ予定通り検証や構築が進んでいるものの,(3)の局所的な特徴抽出に関する検証が幾分遅れており,最終年度となるH24年度において,検証を進め,当初の計画を達成するようにしたい.
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今後の研究の推進方策 |
初年度,2年目には高次統計量カーネルのテクスチャ特徴化に際する性質の実験的な解析を行ってきた.また,高次統計量カーネルとSVMの組み合わせと,従来より用いられてきたガボールフィルタやウェーブレットフィルタと層状ニューラルネットワークの組み合わせ,適応フィルタなどとの比較検証を行った.最終年度は高次統計量カーネルを用いた画像の局所的な特徴抽出に関してその性質を明らかにし,得られた知見をもとに構築した画像分類の枠組みをを検証して報告する.また,2年目には実施することができなかった大規模な分類実験に耐える画像分類プロトタイプシステムを画像処理計算機上に実装し,その有効性を評価する.これらの評価結果と実装で得られた知見を関連学会の研究会及び国際学会に報告し,さらに雑誌論文としてプロジェクトを総括する.
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