研究概要 |
文字入力BCI(Brain Computer Interface)システムの1つであるP300 spellerの文字入力速度向上のために申請者らの提案した信頼度に基づく選択的自動再送要求(RB-SR-ARQ)の性能の検証を行った.その結果,RB-SR-ARQが従来法に比べて文字入力速度を有意に向上させられることを確認した.また,RB-SR-ARQでは呈示刺激数を絞ることにより,近傍刺激を目標刺激と誤判別するケースが相対的に増えること,および,同じ刺激パターンが繰り返されることによりP300信号が低下する問題があることを明らかにした.BCI開発用の汎用プラットフォームであるBCI2000をベースに日本語入力システムを開発した. Social IMEを予測変換エンジンとする日本語入力システムを用いた被験者実験を実施し,平均で21%,最大で33%の文章入力所要時間の削減効果を確認した. ペーストによる電極の頭皮貼付を必要としない米Emotiv社の脳波計測用センサーを購入し,同センサーによるP300の計測が可能であることを確認した. RB-ARQの性能改善を目指して,ひらがなの出現頻度を信頼度計算の事前確率として利用する予備実験を行った.その結果P300 Spellerの刺激呈示回数を削減できる結果を得た. P300 Spellerにおける追加学習法を提案した.本手法により事前学習に必要なデータ数は2文字文でよく,データ取得における被験者の負担を大きく軽減できる可能性を示した. 名古屋大学医学部との連携により,国立東名古屋病院で被験者実験を行った.その結果,行列型刺激呈示法は視線移動の負担があることを知り,画面の一点に刺激を順次呈示して,注視点非依存とするP300 Spellerについて性能評価を行った.行列型の刺激呈示法と比較して有意に効率的である結果を得た. 名古屋大学工学研究科電子情報システム専攻内山剛准教授とミーティングを持ち,磁気センサーによりP300が測定できる可能性があることを確認下.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RB-SR-ARQのP300 SpeHerへの適用結果の検証,BCI2000をベースとした日本語入力システムの開発,脳波計測センサーEmotivの有用性の検証など,健常者を被験者とした場合であるが一応の達成をみた.さらに,追加学習法を提案し,被験者の負担軽減の可能性を示すことができた.病院にて肢体不自由者による被験者実験を開始し,新しい刺激呈示法(RSVP法)開発の端緒につくことができた.しかし,POBox,primeなどの組み込みによる予測変換エンジンの予測精度向上は達成できなかった.
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今後の研究の推進方策 |
RB-SR-ARQ法,追加学習法,RSVP法,ひらがなの出現頻度を事前確率とする手法の効果について被験者実験を進める.特に肢体不自由者による実験を通して,各手法の統合法とその効果について検証する.本日本語入力システムの実用性を高めるために,本システムの操作性,画面インターフェースのデザインなどについても検討する.磁気センサーを用いてセンサーの着脱を容易にする日本語入力システムの開発を行う.
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