研究概要 |
ブレインコンピュータインタフェース(BCI)は,思考するだけで他者との意思疎通を可能にする技術である.本研究は文字入力BCIシステムの有力手法であるP300 spellerの性能改善と日本語入力P300 spellerの開発を目的とした. 昨年度提案したP300 Spellerのための追加学習法について被験者実験を行った.訂正文字(Back space)が入力された場合の追加学習の効果,使用開始から日時を経た後の追加学習の効果について詳細に検討した.その結果,Back spaceの信頼度は100%と仮定して実用上問題がないことを確認し,本手法により事前学習に必要なデータ数を従来法の50%にまで削減できることを示した.また,データ取得の一週間後にP300 spellerの使用を再開した場合には,本手法により再開時の事前学習を不要にできることを確認した. RB-ARQの性能改善を目指して,ひらがなの出現頻度を信頼度計算の事前確率として利用する手法について被験者実験を行った.単語の1文字目(Unigram)に対する効果の検証に加えて,2文字目(Bigram), 3文字目(Trigram)に対してそれらの出現頻度を事前確率に反映する効果についても検討した.その結果,Unigram, Bigram, Trigramによりそれぞれ平均19%, 25%, 38%の入力時間の短縮を実現した. 名古屋大学医学部との連携により,国立東名古屋病院にて肢体不自由な患者さんによる被験者実験を行った.実験室と異なり患者さんの場合には高い判別性能を得ることができなかった.実験室にて初めて実験を体験していただいた被験者に実験後ヒアリングを実施することで,文字入力法を事前に患者さんに理解させることが不十分であったことが分かり,ガイダンス用パワーポイントの内容を改訂した.
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