本研究では、個体の心的状態(感情)に応じて多様な行動を発現する感情表現・伝達・認識機能を備えたロボット個体モデル(群れロボット脳)の開発を目的とする。本年度は、2個体に関して、表情を使った感情表現・伝達・認識機構および価値観に基づき行動を決定するアルゴリズムの構築を中心に検討した。具体的には、感情顔として顔文字をベースにした感情表現顔を表出する装置として、LED(発光ダイオード)マトリックスを用いた表出機構を設計し、動作を確認した。試作した表出機構で表出した感情顔をUSBカメラにより取得、取得した画像から表出顔を認識する機構を検討した。ここでは、ロバストな認識を実現するために形態学的連想記憶モデルを導入、基本的な感情顔の認識が可能であることを確認した。また、価値観に基づく行動選択機構構築にあたり、増田らによるラットの動物行動実験結果に着目した。ラットの振る舞いを模した行動メカニズムを要求に基づく行動選択メカニズムの形で工学的モデルとして設計し、計算機シミュレーションにより基本動作の検討を行った。このモデルを設計する際に、個体間の情報伝達メカニズムも考慮、他個体の行動による自個体の行動の適応的な変化についても検討した。この他、群れロボット脳に不可欠な協調行動についても検討した。群れに協調行動をさせるには、各個体が自律的に自分の役割を判断する機能が重要となる。そこで、局所的な情報から全体のタスク達成状況を推測し、周囲の個体の状況から自分の役割を変化させるアルゴリズムを設計、計算機シミュレーションにより基本機能を確認した。今後は、これらの成果を基にシステムとしての検討を行うと共に実機への実装、動作検証へ繋げていく。
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