研究課題/領域番号 |
22500214
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
宮野 尚哉 立命館大学, 理工学部, 教授 (10312480)
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研究分担者 |
鳥山 寿之 立命館大学, 理工学部, 教授 (30227681)
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キーワード | カオス / 乱流 / 熱対流 / ガスタービン / ローレンツ方程式 / カオス通信 / 風力発電 |
研究概要 |
前年度では、ガスタービン運動方程式の無次元化を行い、無次元化運動方程式はローレンツ方程式を2N+1次元に拡張した星型ネットワークで表される力学系に等価であることを明らかにした。また、カオスガスタービンの動画から角速度の時間依存性を計測することを可能にし、角速度変動の理論予測と実験結果の比較を高い精度で実行した。これらの成果を踏まえ、平成23年度で設定した課題1~5についてそれぞれ以下の研究成果を得た。 1.拡張ローレンツ方程式に従う二つのシステムが無次元角速度または無次元吸気圧の正弦フーリエ係数の直接結合を通して同期することをリアプノフ関数に基づく理論によって明らかにし、数値計算により実験的に確認した。これは先例のない知見である。 2.拡張ローレンツ振動子のカオス同期を利用したカオス秘話通信の可能性を数値実験により実証した。拡張ローレンツ振動子を利用したカオスマスキングでは、暗号化鍵の規模を指数関数的に増大できるので、総当たり攻撃のよる暗号鍵推定が実際上不可能となる。 3.拡張ローレンツ振動子のアナログ電子回路による表現をLTSpiceによる回路シミュレーションを通して数値実験的明らかにした。これは先例のない知見である。 4.試作したカオスガスタービン間の実際の機械的結合機構については未解明であり、検討中である。 5.拡張ローレンツ方程式は高レイリー数における乱流熱対流、即ち、乱流的大規模循環流の速度場変動に関する動力学モデルとなる可能性のあることを発見した。これは、熱流体力学における先例のない知見である。この発見に触発され、乱流状態にある風力から発電を行うシステムについて基礎検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カオスガスタービンの無次元化運動方程式としての拡張ローレンツ方程式の工学的応用であるカオス秘話通信については計画通りに進捗しており、今後、秘話通信の暗号鍵配送方式も含めてカオス秘話通信システムの可能性を数値実験により検証する計画である。拡張ローレンツ方程式が高レイリー数における乱流的大規模循環流の動力学モデルとなる可能性があることに関する発見は計画当初には予想されなかった研究成果であり、この発見に触発されて乱流からの風力発電の研究へと発展できたことは、カオスガスタービンによるカオス発電とは異なるものの、新しい発電方式の研究に着手したという意味で計画通りであると言える。
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今後の研究の推進方策 |
拡張ローレンツ方程式の動力学的性質については相当に重要な知見が得られた。この成果に基いて、カオス秘話通信への応用可能性について暗号鍵配送方式と暗号鍵規模の観点から数値実験を行い、秘話通信方式としての長所を定量的に解明する。風力発電への応用は、時空間カオスとしての乱流的風向、風速の確率予測を風力発電システムの制御に利用するという観点から推進する。ただし、personal power generationと表現されるような小規模発電システムを想定する。この観点からの発電システムの研究を推進するには、風速、風向に関する観測データが必要となる。この問題を解決するために、風向、風速計測装置の導入方法を検討する。
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