研究課題
常に連続観測される観測像は、同一物体の各方位からの観測像である可能性が高く、逆に、連続観測されたとしてもそれが一過性である場合は、互いに無関係な物体の観測像である可能性が高い。そこで、観測順番に関する統計性を使って、観測物を自己組織的に認識するモデルの構築が本研究の目的である。学習順番の近さを相関の近さに変換して記憶するモデルにAmitの連想記憶モデルがある。本研究の22年度の研究目的は、Amitモデルの学習順番にランダム性を入れることで、獲得アトラクタ相互の相関性がくずれ、相関のないアトラクタに変換されるかを調べることとした。解析の結果、学習順番に入れるランダム度合いに応じて以下の3つのアトラクタが存在することが分かった。学習順番に完全な連続性がある場合は、従来から知られているように獲得されるアトラクタ間の相関の強さが学習順番の近さに応じて変換された。一方、学習順番がほぼランダムであると、相互に無相関のアトラクタに変換されて記憶されることが分かった。また、学習順番の連続性とランダム性が同程度含まれると、獲得されるアトラクタは相互に相関はあってもその相関値に違いはなく、学習順番の情報は保存されないことが分かった。学習順番に連続性が強いと、それらの記憶パターンが順番の情報も含んだ状態で保存され、連続性が中程度になると順番情報は失われて関連があるということだけの情報が残り、連続性が非常に弱くなる記憶パターンは相互に関係がないことを表現するようになり、リーズナブルな情報表現がなされていると考えられる。この3状態の変化は、学習順番の連続度合いによって、一次相転移が生じるように変化した。以上から、学習順番情報が、自己組織的な情報処理モデルの構築に有効な情報となりうることが分かった。
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Journal of the Physical Society of Japan
巻: 79 ページ: 064001-1-064001-7