研究課題/領域番号 |
22500217
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
伊庭 幸人 統計数理研究所, モデリング研究系, 准教授 (30213200)
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キーワード | 機械学習 / 数理工学 / 統計数学 / 統計力学 / アルゴリズム |
研究概要 |
「サロゲーション及び複雑な帰無仮説からのデータ生成」については、前年度に研究した「非線形時系列データの複数の時間遅れでの時間相関関数を保存するサロゲーション」について、マルコフ連鎖モンテカルロ法の一種であるマルチカノニカル法を用いたシミュレーションをさらに進めた。提案手法の特徴は、ターゲットである「時間相関関数が厳密に保存された仮想データ」に「保存性をある程度破った仮想データ」を適宜混ぜて発生させる点で、理論上は偏りを発生させることなく、この問題に対するマルコフ連鎖モンテカルロ法の収束を桁違いに加速することができる。このテーマでの研究成果について、情報論的学習理論と機械学習研究会(IBIS-ML)および日本物理学会で口頭発表を行い、IBIS-MLの会議録に報告が掲載された。また、神経科学の問題への同様の手法の応用について、当該分野の専門家と議論を行った。神経科学への応用のためには、さらに具体的に事例を詰めるとともに、必要な統計量の効率的な計算法を開発する必要があると思われる。もうひとつの研究課題の「非線形情報処理におけるプレイメージ生成」については、機械学習の手法による創薬手法の研究を専門とする研究者との共同研究を開始した。化合物の化学式が与えられたときに、その特徴を抽出し、薬効や副作用の有無を判断するのが、通常のデータマイニングである。これに対し、プレイメージ生成の場合は、特徴量や判別の結果を与えて、該当する化学式を逆に生成することを目指す。現在、具体的なカーネル判別の事例について、マルコフ連鎖モンテカルロ法の実装を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
簡単なサロゲーション問題でのマルチカノニカル法の実装に成功し、研究会・学会等でその結果の発表を行い、査読なしであるが論文を発表できた。また。プレイメージ生成へのマルコフ連鎖モンテカルロ法の応用についても、創薬分野の専門家との共同研究を開始しており、今後成果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
サロゲーション問題については、これまで得た着想と結果を国際会議で発表し、欧文論文にまとめることを目指す。また、創薬分野の研究者と協力してプレイメージ生成問題へのマルコフ連鎖モンテカルロ法の応用の研究を進める。これらを踏まえて「仮想データ」の概念のさらなる展開を目指す。
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