研究概要 |
1.政治学の理論に基づいた英国の公共図書館政策の整理 福祉国家再編期の政治を理論的に分析する方法を比較検討し,公共図書館政策の分析に有効な方法を決定した。政治学のPaul Piersonによる福祉国家再編の3つの次元(再商品化,コスト削減,再調整)を用いて,福祉国家再編期における英国の公共図書館政策を整理し,その特徴を明らかにした。この研究の成果は,2010年10月の日本図書館情報学会研究大会において発表し,現在,論文執筆の準備を進めている。 2.中央政府による自治体への行政介入の事例に関する調査 英国の公共図書館行政における中央地方政府間関係の実際と関係者の認識を調べるために,中央政府が自治体による図書館閉鎖を問題視して行政介入したWirralの事例に焦点を当てて,文献調査とインタビュー調査を行った。 まず,Wirralの公共図書館や英国図書館において,Wirralの図書館の歴史や統計などの背景情報,公共図書館に関する中央地方政府間関係を知る手掛かりとなる行政文書や報告書などの資料を収集した。 次に,Wirralでの行政介入の実際とその後の経過,関係者の認識等に関し,Wirralへの行政介入に際し中央政府側の調査官を務めたSue Charteris氏,公共図書館関連の専門職団体の理事のJohn Dolan氏に対し,インタビュー調査を実施した。またWirralの図書館長Sue Powell氏,図書館閉鎖に反対した市民団体代表のAlec McFadden氏に対し,書面によるインタビューを別途実施し,回答を入手した。 現在,調査結果の分析を進めている。2011年秋の学会において,研究成果を発表する予定である。
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