研究概要 |
1.英国の公共図書館政策の変化についての分析 政策に関与するアクターとアクター間の関係性に着目して,英国の公共図書館政策の変化の分析を進めた。英国では,現在,中央政府からの補助金の大幅削減によって,自治体の運営する公共図書館サービスの閉館が相次いでいる。公共図書館行政の監督権限を有する文化・メディア・スポーツ省も,財政再建に伴う政府の機能縮小によって,積極的な改善策を打ち出せないでいる。このような状況のもとで,市民が自ら団体を組織して閉館に反対する運動を展開し,それらの団体が利益集団としての機能を持つようになってきた。平成23年度は,全国規模で活動を展開する代表的な2団体(Library Campaign,Voices for the Library)について,公共図書館政策におけるアクターとしての役割を明らかにするために次の調査を実施した。まず,両団体が下院の特別委員会に提出した意見書などを中心に,関連文献による調査を行った。次に,2012年1月から2月にかけて現地を訪問し,両団体の役員を対象とするインタビュー調査を実施し,活動の実態や公共図書館に対する見解について調べた。 2.日本の公共図書館政策の変化についての分析 英国と同様に福祉国家再編期にある日本の政策変化について,前年に引き続き,関連文献の調査を進めると共に,連携協力者等と定期的な議論を行った。特に,市民の政策への関与という視点から,図書館友の会や図書館協議会の活動,市民が参画しての熟議の実践等に着目した。 3.学会発表・論文執筆 平成22年度に実施した調査結果に基づき,中央政府の行政監視の方法の変化について,研究発表を行い,その後,論文を執筆して,日本図書館情報学会誌に投稿した。投稿した論文は,2012年1月に受理された。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,次の手順で研究を進める。まず,公共図書館政策に関与する市民団体の調査結果を研究発表し,論文として執筆する。次に,日本と英国の公共図書館政策の変化をテーマとするワークショップを開催し,これまでの研究成果を発表し,出席者からフィードバックを得る。ワークショップの準備と並行して,これまでの3年間の研究の成果を英文の論文にまとめ,英国の図書館情報学分野の学術雑誌に投稿する。
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