英国では,財政緊縮を背景に,政府機構の縮小や行政サービスの見直しという形で,従来の福祉国家政策からの転換が図られつつある。このような変化に伴い,図書館政策を担う中央政府内の専門的機関が廃止・縮小され,地方自治体においても,分館の閉館,開館時間の短縮,直営からボランティアによる運営への転換が進行している。一方で,地方自治体の図書館サービス削減に対しては,中央政府や司法が介入する事例が出現すると共に,一般市民も各地で反対運動を展開している。これらの福祉国家再編期における英国の公共図書館政策の変化について,政策に関与するアクターという観点から分析を進め,今年度までの研究成果のとりまとめを行った。 1.2012年5月の日本図書館情報学会2012年度春季研究集会において,図書館サービスの削減に反対する市民団体を支援する2つの全国的団体(Library CampaignとVoices for the Library)についての調査結果を発表した。構成メンバー,活動,他の団体との連携等の点からそれぞれの団体の特性を明らかにした。 2.2012年12月に,慶應義塾大学においてワークショップを開催し,これまでの2年間の研究の成果について報告した。ワークショップでは,近年の日本と英国の公共図書館政策の共通点,相違点,今後の動向等をテーマに,図書館情報分野の研究者や図書館員と議論を行った。この議論をふまえたうえで,福祉国家再編に伴う英国の公共図書館政策の変化についての論文の執筆に着手した。 3.これまでの調査で得られたデータ,ワークショップにおける成果発表や議論の記録等をとりまとめ,webサイトに公開する準備を進めた。
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