研究概要 |
和古書目録利用者が対象資料を同定識別する際に必要な情報として,出版に関わる情報と名称典拠に関する情報がある。出版に関わる情報について,記述対象資料に表示されている場合と表示されていない場合,本来表示されていたであろう箇所が何らかの理由で残っていない場合がある。目録担当者は出版に関する情報として記録すべき内容を判断するために既存の目録や参考資料を参照する。その際に有効な情報を提供し,担当者間共有することで特に類似性・関連性の高い資料を参照することができる。関連資料間の同定識別で必要とされる情報は多端であるが,共有データベースとしてその相異を判断する有効な情報の提供をすることができる。そのため,残存資料が比較的多い著作を対象に,イメージデータを収集し,NACSIS-CATやその他の目録の書誌情報,及び参考資料として一般に利用されている情報と比較しながら,共有情報としての内容を検討しながら蓄積した。 名称典拠のうち著作典拠について,和古書目録において有意な著作典拠データについて検証した。一般に目録の著作典拠データの概念は共通しているが,従来和古書目録においては著作概念自体の共通理解があるものの実態は一定していない。資料活用の多様性同様,書誌情報の多様な利用方法を一概に規定することは困難である。その前提で対象資料の選択時の「国書総目録」などの目録の認識方法に関し,研究者への聞き取りなども行った。提供されている書誌情報の実態を典拠情報の基準と比較し,併せて,利用上の認識方法とも相互に検証し,有効性と課題について考察し学術研究大会・学術雑誌で発表した。 構築しているデータベースを有効に活用するためには,書誌情報作成のための人材育成も必要となる。人材育成のためのトレーニング方法に関する基礎的な問題について,図書館司書育成の研究者との懇談を含めて考察を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に整備した情報をデータベース化したが,利用上の問題からデータベースの再創成をすることにしたため,データの追加整備より再創成を優先した。そのため搭載データ量がやや少ないものの,収集できたイメージデータとの関連づけなどは,概ね終了している。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度として,実効性のあるシステムとするための構築を目指す。2年度に追加できなかったデータを追加するとともに,メタデータ作成上有効な知識ベースとするための改良と,利用者側からの意見も集める予定である。加えて,知識共有データベースをより有効なシステムにするために,資料所蔵館が利用でき,データ量の拡大に協力できる体制と,そのための人材育成についても考究していきたい。
|