採択一年目は、追加採択であったため、研究が少々出遅れてしまった感がある。しかしながら、限られた時間内で、出来る限りの研究は遂行し、いくつかの研究成果を上げることができた。 進化経済学会では、井出は研究統括としてフルペーパー一本、井出と麻生が共同研究としてポスター一本を発表することが出来た。この点については、当初の研究計画を達成したため安堵している。内容的には、情報流通の観点から、観光学を俯瞰科学としてとらえようとする新しい視点を打ち出すことが出来、一定の研究成果を上げることができた。この俯瞰科学という考え方は、工学の分野で発達した論理体系であるが、観光学の世界では未だ先行研究がない。今後は情報学の視点から、俯瞰工学の考え方を人文・社会科学の領域に取り込み、観光学に新たなパースペクティブを与えたい。 共同研究者である麻生は、経済学の視点から積極的に研究に関与した。特に、奈良県をフィールドとして過疎地域の対策について、経済学の方法論に基づき、観光学と情報学の観点を加味した上で、具体的な提言を行なっている。 反省点としては、情報系の学会における発表が少なかった点であるが、これについては、すでに5月に情報処理学会人文科学とコンピュータにおいて、観光とデータマイニングに関する論考を発表する予定を組んでおり、当初に設定したスケジュールになるべく早く追いつきたいと考えている。また、追加採択であったことも影響し、初年度は国際会議での報告がなかったことが悔やまれれるが、早急に適切な対応を行いたい。
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