本研究は、東日本大震災の発生に伴い、日本人の観光行動に変化(=いわゆる“自粛”や各種の風評被害)が生じ、研究計画を立てた段階の社会的前提が使えなくなってしまったために、研究の遂行に困難が発生してしまった。さらに、研究計画発案時には、一般のWEBページベースで流れていた観光情報が、SNS経由で動くようになり、考察の視座を根本から変える必要性も生じた。 このように、複数の難問に直面した本研究課題であるが、いくつか特筆すべき考察もあるので、それについては詳しく記しておきたい。 アメリカでは観光情報がSNSベースで流れることは2011年頃から指摘されていたようであるが、日本では未だこのムーブメントは大きな潮流にはなっていない。その理由として、日本の観光のマス層は、退職者層や中高年の女性グループが多いため、SNSのコアな利用層と離れてしまっているからではないかと推察できる。また、アメリカでは小規模旅行代理店(いわゆるHome Based Agent)がSNSを上手く顧客管理に利用し、顧客のロイヤリティ向上に役立てているが、日本の場合は先述の客層とSNSの乖離に加えて、小規模旅行代理店がかなりのレベルで壊滅状況にある点もアメリカとは異なる状況であると言えよう。 今後の研究の方向性としては、SNSが日本人の観光行動にどのような影響をあたえるのかという点について、詳しく見ていく必要性があるが、その際、若者の観光動向とSNSの関連性にポイントを置く事が重要である。
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