インターネット上のネット・コミュニティを対象にした情報化社会において、人々がネットワークから正確な情報を得るためには、情報セキュリティの研究と共に、システムを扱うヒトの「信頼」の両面を、同時に確保する必要がある。前者については、社会問題となっているサイバー攻撃を対象にした検討を、また後者は、ネットワーク・コミュニティにおけるメンバー間の相互信頼を評価する方法について考察した。 情報セキュリティに関する研究としては、前年度実施したアンケートと実験結果の分析を中心に検討を進めた。特に、ヒトがウイルスの脅威を提示された時、脅威の深刻さおよび生起確率を認知するレベルに関する研究に焦点をあて検討した。現在までに、実験協力者をPCの習熟度別に高・中・低の3段階に分類した場合、統計的有意な分析結果が得られた。さらにPC習熟度が高く、かつウイルス感染経験の有るメンバーが脅威を正確に認識してウイルス駆除行動まで実施する可能性が高いことを明らかにした。それらの結果に関しては、国内学会3件、国際会議1件で発表した。今後は、これらのデータの精緻と共に、これらの結果を踏まえたウイルス感染を防ぐ技術的対策の具体化を検討する予定である。 ネットワーク・コミュニティに関しては、代表的なSNSであるTwitterを対象に、組織活動の評価法を提案し、その有効性の検証研究を開始した。衆議院選挙をトピックとするコミュニティの形成や情報の正確さ等の調査を行い、学会発表1件を行った。今後は、コミュニティ・メンバーにおける類似性から特徴づけられるコミュニティの性質、それに基づくコミュニティメンバーの将来行動予測、さらに提案評価手法の精度検証と、その汎用ツール化を行う予定である。
|