研究課題/領域番号 |
22500238
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研究機関 | 文部科学省科学技術政策研究所 |
研究代表者 |
加藤 真紀 文部科学省科学技術政策研究所, 第1調査研究グループ, 上席研究官 (80517590)
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研究分担者 |
安藤 朝夫 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (80159524)
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キーワード | 国際共著 / 国際共同研究 / 国際移動 / 計量書誌学 / 研究業績 |
研究概要 |
研究代表者が知る限り、国際共著論文を行う国の組み合わせに関係する要因や、国際共著論文の質の高さ(被引用数の多さ)が何によってもたらされるのかは、社会経済学的な視点から十分に解明されているとは言い難い。そこで本研究は科学分野のトップクラスの論文であるNatureとScience、およびインパクトファクターの高い化学論文雑誌を対象とした分析により、これら課題の解明を計量的分析により明らかにすることを目的とする。 平成22年度は、NatureとScienceの2誌を選びトムソンサイエンティフィック社のデータベースを用いて国際共著関係や著者の移動状況を分析した。この結果、国別の論文生産には、研究環境(研究開発費の多さや研究者数の多さ)および研究者間の交流や競争が正の影響を与えることが示された。しかしモデルの決定係数が低く、研究者数等の符号が期待とは異なるなど解釈を必要とする結果も同時に示された。よって23年度はこのような結果を踏まえ、モデルの精緻化や推定方法の改善を行った。具体的には、文献調査の結果、論文数や移動した研究者数など事象の生起回数であるカウントデータに特化した分析手法を用いたところ、モデルの決定係数が低いという問題も解決した。 23年度は英語論文を重視するコミュニティという特徴を持つ化学分野の論文を対象として、より大規模なデータベースを研究者単位および論文単位に整備した。このデータベースを用いて、NatureとScienceによるパイロットスタディの結果を検証した結果、NatureとScienceで示された結果とほぼ同様の結果が確認された。また同データベースを用いて国際共著の被引用数の高さと研究者のパフォーマンスとの関係を分析するための準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
22年度の分析で確認された課題が解決し、23年度は化学論文雑誌を対象とした大規模データベースの整備や同データベースを用いた分析も進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に整備した化学論文のデータベースを用いて、国際共著論文の被引用数の多さと研究者のパフォーマンスの高さとの関係を分析する。既存研究ではイタリア1ヶ国でのみ確かめられていることから、全世界の研究者を対象とした場合の頑健性を分析する。また、国際共著論文の被引用数の多さは研究者のパフォーマンス以外によって説明する可能性についても併せて分析する。 さらに国際研究の成果や国際移動に影響を与える可能性が高い要因を文献等から調査する。この中には、各国の経済成長や研究成果に影響を与えていると言われている「多様性」に関連する要因も入ると考えられる。また文献調査により、定性調査による変数追加やモデル変更の可能性を検討する。
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