研究概要 |
本研究は,機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて,日常のコミュニケーション場面における発話の意図の理解がどのような神経基盤によって支えられているのかを解明することを目的とした.このなかで本年度は以下の2点について実験及び検討を行い,それぞれ成果を発表した. 1)アイロニー理解に関与する神経基盤の検討 fMRIを用いたアイロニー理解に関する二つの実験の結果を比較検討し,アイロニー理解における発話意図の推論に関与する賦活領域及び発話によってもたらされる感情処理に関与する賦活領域を精査した.その結果,発話意図の推論には,内側前頭回(BA9/10)や上側頭回(STG)に大きな賦活が見られること,またLiteralな発話やアイロニー発話によってもたらされるネガティブな感情処理にはAmygdalaやInsulaなどが関与していることが明らかになった. 2)間接発話の理解に関与する神経基盤の検討 間接発話は,文字どおりの意味とは異なった内容を間接的に伝達する言語行為であり,この発話理解には発話者の心的状況や意図を推測する必要があると考えられる.本年度は,間接発話による発話の非字義的理解を要する文脈と字義的理解のみを要する文脈条件を用いて,脳内の処理プロセスに違いがあるかどうかについて,fMRIを用い,課題遂行中の賦活領域を比較検討した.その結果,間接発話理解には字義的理解に比べ,発話意図の推論(mentalizing)に関与すると考えられる内側前頭回(BAIO)や,意味の逸脱の検出及び照合に関与する下前頭回(BA47)や側頭領域の関与が明らかになった.
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