研究課題/領域番号 |
22500241
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
井須 尚紀 三重大学, 大学院・工学研究科, 教授 (50221073)
|
キーワード | 動揺病 / 船内シアター / 映画上映法 / シミュレータ |
研究概要 |
本研究の目的は、航海中の映画視聴を通して船酔いを軽減する方法を開発することである。映画と同時に船舶の揺れに合わせた視運動刺激を与えることで、船酔いの原因である視覚-平衡感覚間の感覚情報競合を抑制し、船酔いの軽減を図る。本年度は、昨年度に基本設計した映画上映法について問題点の洗い出しと改善を行うために、本学生物資源学部附属練習船勢水丸を使用して航海実験を行った。船舶の揺れの主な運動成分であるピッチ回転、ロール回転、上下運動を姿勢センサで検出し、船舶の揺れと一致した視覚誘導自己運動感覚が生じるように映画表示部(主映像)の周辺に背景映像を付加する映画上映法や、主映像を船舶運動に合わせて移動する映画上映法、および主映像を船窓から見える外景に見立てて映画の映像自体を船舶の揺れに応じて傾斜する映画上映法について船酔い軽減効果を調べた。なお、映像のピッチ回転の知覚を高めるために、偏光方式による3D表示の映画上映を取り入れた。さらに、主映像および背景映像の3D表示位置をスクリーン位置-無限遠に変化させ、表示位置による船酔い軽減効果への影響を検討した。 一方、刺激-感覚の心理学的測定の再現性を確保するために、船内シアター・シミュレータを構築した。当研究室に既設の大型3D映像・音響システムとモーションベースを用いて船体運動シミュレータを構築し、船内シアターの仮想環境を構成した。本年度は、被験者の頭部の位置変化が小さいものと仮定してシミュレータを構築したが、僅かな頭部位置の変化が仮想環境での映画上映面の位置変化をもたらし、被験者に違和感を与えることが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
航海実験による映画上映法の問題点の洗い出しと改善については、昨年度に基本設計した映画上映法に加えて、映画の映像自体を船舶の揺れに応じて傾斜する映画上映法の船酔い軽減効果や、3D表示することによってピッチ回転の知覚を高める効果を調べるに至った。また、船内シアター・シミュレータの構築に関しては、船内シアターの仮想環境を構成し、シミュレータ実験を実施する上で必要な改善点を明らかにした。
|
今後の研究の推進方策 |
来年度は、刺激-感覚の心理学的測定の再現性を確保するために、船内シアター・シミュレータを用いた実験室実験を中心にして研究を実施する。僅かな頭部位置の変化が被験者にもたらす違和感をなくすために、被験者の頭部位置や方位角・傾斜角が変化しても適正に3D映像が与えられるように船内シアター・シミュレータを改良する。また、これまでの3D映像システムで使用してきた直線偏光を円偏光に置き換える。主映像および背景映像の位置や回転を船舶運動に応じて与える関数を設定するため、船内シアター・シミュレータを用いた実験室実験によって最適な関数パラメータの値を推定する。
|