研究課題
本研究では、航海中の映画視聴によってどの程度船酔いが増強するかを定量的に測定するとともに、映画視聴を通して船酔いを軽減する方法の開発を行うことを目的としている。映画と同時に船舶の揺れに合わせた視運動刺激を与えることで、船酔いの原因である視覚-平衡感覚間の感覚情報競合を抑制し、船酔いの軽減を図る。船酔いを低減する映画上映法を考案し、その有効性を検証する。本年度は、これまでの予備実験で得られた結果に基づき、提案する映画上映法によって船酔いの増強をどの程度低減出来るかを測定した。本学生物資源学部附属練習船 勢水丸を使用して4泊5日の航海実験を実施し、本学学生16名の被験者を用いて6回の実験を実施した。船尾方向を正面とするように設置した3D用平面スクリーンの中央部に「映画窓」(映画が映写される矩形領域)を表示し、「映画」(ビデオ映像)を映画窓によってトリミングされるように映写した。映画窓の周辺には「背景」(静止画)を3D投影した。船舶運動のピッチおよびロール回転を計測し、船舶の運動と逆方向に「映画窓」「背景」「映画」を回転・移動させる/させないの組合せからなる8種類の映画上映法を用いた。いずれも回転・移動させない上映法を対照刺激とし、他の7種類の上映法をテスト刺激として比較評価を行った。その結果、「映画」のみを回転する上映法が、最も不快感および揺れの感覚強度が低く、映画の見易さが高いことが示された。「映画窓」や「背景」の動きは、揺れの感覚は強めた。一方、刺激―感覚の心理学的測定の再現性を確保するために船内シアター・シミュレータを構築し、昨年度に引き続いてその改修を進めた。モーションベースによる船舶運動の模擬を改善し、船内シアター・シミュレータを用いて洋上映画上映法の評価実験を実施する準備を行った。
2: おおむね順調に進展している
洋上映画上映法の効果の測定については、航海実験を実施して8種類の上映法を比較し、不快感や揺れの感覚強度が低く、かつ映画の見易さが高い上映法を選別した。船酔いを低減する映画上映法としての有効性が示唆された。また、船内シアター・シミュレータの改良については、モーションベースによる船舶運動の模擬を改善した。
来年度は、大型3D映像・音響システムとモーションベースを用いて船体運動シミュレータを構築し、船内シアターの仮想環境を構成する。船酔い低減映画上映法を船内シアター・シミュレータに組込み、船酔い低減効果の評価実験を実施する。船舶運動の関数として映像の変位や回転を与え、船酔いの低減効果を心理学的に測定する。また、本学生物資源学部附属練習船 勢水丸を使用して3泊4日の航海実験を実施し、本学学生10名の被験者を用いて有効性検証の測定を行う。
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