研究概要 |
平成23年度は,(1)実験システムの構築と(2)発話思考法で用いられる模擬クライアント(俳優)を使った音声刺激の作成を目標とした。 このうち,(1)についてはほぼ完成し,実験で使用するパソコン上でも概ね目的とした振る舞いをすることが確認された。 一方,(2)については,当初(a)台本の作成,(b)演出上の準備,および(c)発話刺激の録音,の三段階に分けた作業を想定していた。しかし,作成された音声刺激を聴覚呈示しての発話思考が実験参加者に過度な認知的負荷を与え,その結果,目的とするデータが収集できなくなる事態の生じる可能性が出てきた。そのため,(a)の作業を完了した段階で刺激呈示方法を再検討することとした。いくつかの予備実験の結果,台本テキストのみを文あるいは語句ごとに視覚呈示する方法,あるいは音声刺激とテキストを併せて呈示する方法,の二つが有効であることがわかった。今後はどちらの方法を採用するか早急に詰めてゆきたい。 なお,当初の目標には含めていなかったが,実験参加者の発話思考データの文字化において利用する予定の音声認識ソフトも試用してみたところ,期待したレベルの結果を得るのは難しいことがわかった。この種のソフトを有効に活用するには,やはり,発話者が多少なりとも音声認識を意識した発話をしなければならず,発話思考法によって記録された音声データに関しては,ほとんど正しい認識がなされなかった。 ただし,このソフトの利用価値がまったくないわけではなく,録音された音声を聞きつつ,改めて認識に適した形で発話し直すという作業を経れば,文字を打ち込んでゆくという従来の方法よりも格段に効率良く文字化できることも確認できた。実験で得られる発話思考データの文字化にはこの手法を用いたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は発話思考プロトコルデータの収集とそれの文字化,およびテキストデータとしての整備を行う。当初採用予定であった音声刺激のみを聴覚呈示する方法を改め,同じ内容のテキスト刺激を単独で視覚呈示する方法か,あるいはテキスト刺激と音声刺激を併用する方法のいずれかを使って実験を行いたい。 発話思考データの文字化については,音声記録された実験協力者の発話を聞きつつ,それを音声認識に適した形で改めて発話し,この発話に対して音声認識処理を施す,という方法を用いて進めてゆく。
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