前年度までに実験システムの構築は完了していたが,今年度は新しいOSに対応するよう若干の変更を加えた。 これまでの検討で,音声刺激を用いた発話思考法実施の可否について懸念が生じていたが,今年度,予備的な音声刺激を作成し試行してみたところ,やはり実験協力者にとっては極めて難しい認知的課題となることが確認された。これを受けて,研究グループ内で改善の方策を検討した結果,1)音声刺激の呈示を実験参加者自らが任意の箇所で一時停止・再生再開できるようにした上で,一時停止の最中に反応を求める,2)実験参加者の自然な思考の流れをできるだけ乱さないために,テキストを呈示するこれまでの方法に回帰する,という二つの方策が定まり,当面はこの両者を併用して研究を進めることとした。 発話データのテキスト化については,特定の個人が発話データを聴取しつつそれを追唱する方法で,既存の音声認識ソフトを最大限活用できることがわかった。 データ公開用のサーバについては,学内に新たに設置された機器にその機能を実装することが可能となったため,サーバ用OSのセットアップや必要となる各種ツール・アプリケーションの設定を行った。 本研究課題の遂行によって副次的に得られたいくつかの成果を利用してまとめられた実験結果が,河内・齊藤・河内・近藤「クライエントに対する臨床実践家の臨床判断の特徴」として臨床発達心理実践研究に投稿され,審査中である。
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