研究概要 |
本研究は,人間の推論と判断に関して,これまで個別に研究されてきた様々な現象を,確率モデルによって包括的に捉えること,さらに,そうして包括的に捉えたときにキーとなる基本的説明概念を,因果性との関連で解釈することを目的として現在進行中である.研究内容は,演繹推論の確率モデル構築(研究1),確率推論の確率モデル構築(研究2),帰納推論の確率モデル構築(研究3),因果性と等確率性の統合(研究4)の4つに分割される 平成22年度は,主に研究1を実施し,研究2にも着手した.研究1としては,定言的三段論法推論の確率モデルを構築した.このモデルは,確率的表象と個体ベースの表象という2つの大きな仮定に基づくもので,次の3つの処理段階を仮定している.まず,(1)与えられた前提文から確率原型モデルと呼ばれる確率的表象を構成し,次に,(2)確率原型モデルに基づいて,ランダムサンプリングにより個体ベースの標本メンタルモデルを形成する.最後に,(3)こうして構成されたモデルに基づいて,論理的結論を生成する.確率的プロセスを仮定したことにより,誤答の頻度分布の予測が可能となった.そこで,過去の実験データを用いてモデルの記述的妥当性を量的に評価したところ,データに対する非常によいフィットが得られた.また,定言的三段論法の推論と,帰納推論や確率判断研究においてよく知られているエラーとの間に,これまで知られていなかった関係(等確率性仮定)を見出すことができた.以上の研究成果は,平成23年度の国内の学会で発表予定である.また,海外の論文誌に投稿するため,現在,論文執筆中である.研究2としては,モンティホール問題について考察し,予備的実験を実施した
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