研究課題
本研究は,確率モデルを道具として,これまで個別に研究されてきた推論と判断の様々な現象を包括的に捉えることと,そうして包括的に捉えたときにキーとなる基本的説明概念を,因果性との関連で解釈することを目的として実施された。本年度は最終年度(4年め)にあたる。これまでの3年間で,定言三段論法推論(演繹推論)の確率モデル構築と精緻化,実験によるモデルの妥当性を検証,モンティ・ホール問題(確率推論課題)と因果推論の関連性の発見とその検証,基準率課題(確率推論課題)における等確率性仮定の原因の究明などを実施した。以上を踏まえ,今年度はこれまでの研究の総括として,因果性と等確率性の概念の統合を試みた。新たに図地フレーミングという概念を導入し,思考の対称性と非対称性の不可分の関係を明らかにした。肯定と否定は論理的には可換であるが,心理的には可換ではない。一般に,肯定(生起・行為)は注意の対象であり,否定(不生起・非行為)はそれ以外の背景である。肯定と否定の関係は,知覚現象についてRubin (1915/1958) が指摘した「図と地」の関係に似ており,注意の向かない背景事象は曖昧になり,有効な認知的処理を受けにくい。このことが,演繹,確率推論,類推,意思決定,メタ表象(心の理論),対人認知など,これまでに心理学の異なる領域で個別に論じられてきたさまざまな錯誤やバイアスと関係していることを明らかにした。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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立命館文学
巻: 636 ページ: 131-147
Psychonomic Bulletin & Review
巻: Vol. 20, No. 4 ページ: 790-797
10.3758/s13423-013-0389-0