研究概要 |
本年度は,2000-2009年の10年間にわたるアルゼンチンアリの廿日市市内での分布拡大のデータを解析した.2000年以来継続している廿日市市周辺の定点観察地77か所のアリ相調査を実施し,1か所で新たにアルゼンチンアリの侵入が確認された.11年間で侵入地点は27か所から46か所に増加し,緩やかではあるが分布が拡大していることが示された.同定作業はまだ中途段階だが,侵入後に在来アリ相が変化していく過程を多数の地点で追跡することが出来た.2000年以来のアルゼンチンアリの侵入と分布拡大の様相および在来アリ相の変化を定量的に分析するために第一段階として,これまで得られたアリ相にをデータベイス化し,一覧できるようにした.これにもとづいて,空間統計モデルの設計を開始した.このようにして得られた廿日市市のアルゼンチンアリ分布変遷のデータにもとづく,アリ分布拡大のパラメーター推定方法を検討している.観測データとの対応づけを考慮した,空間構造のある一般化状態空間モデルの試作に着手し,潜在的なアリ分布をあらわす変数をガウシアン確率場で表現する方法について検討し,廿日市市内の道路・河川についてのさまざまな属性がアルゼンチンアリの分布拡大に与える影響の推定に適したデータ構造とアルゴリズムの研究を進展させた.さらに,これらの研究と関連のある,動物の時空動態モデリングの予備的な研究ならびにアリの形態に関する統計判別に関する予備的な研究の論文を発表した.
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