研究概要 |
本研究では,生態系へのインパクトを考慮した水産資源管理法を発展させるために,生態系モデリング,生態系構造の推測,そして生態系の保全を考慮した管理方法とそのリスク評価について,統計学的なアプローチから研究することを目的とする.これにより,生態系へのインパクトを考慮に入れた持続的な水産資源利用に対する基盤的な方法が提供される.本研究を遂行するために,平成22年度は以下の研究を行った. 1.生態系の最小現実モデルの一つとして,複数の捕食者および被食間の動態を余剰生産モデルとして表現するとともに,現実に起こり得るデータの情報量の少ない種の存在を想定し,モデルのパラメータにランダム効果を取り入れた階層モデルを構築した.また,その推定性能を評価するためにシミュレーションを行った.その結果,資源量推定値の時系列スパンが短い場合あるいは疎な場合に階層構造が大きな効果を生むことが確認された. 2.本研究において包括的生態系モデルはシミュレーションによる資源管理ストラテジーの評価に用いられるが,そのインプットデータの整理を南極海を対象に行った.すなわち,南極海に生息するオキアミを中心とした主要8種について包括的モデリング用のデータを収集し,マスバランスの同定,および生態系の動態に関するモデルとシミュレーションの予備的検討を行った.この作業は,23年度に実施を予定している構成種を更に増やした場合の検討の基礎を与える意味で有意義であると考える.
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