フィードバックモデルの大脳活動部位間のダイナミックスを示す伝達関数を脳磁図データから推定する理論・アルゴリズムをこれまでに開発してきたが、大脳部位間の動的連関を脳磁図データから効果的に同定するにはフィードバックシステム論的手法に即した再構成データを測定データから抽出するために適切な前処理等と同定結果の妥当性を確認する方法が必要となった。つまり、定常統計解析である本手法にはその適用にあたっては一工夫が必要で、特に、独立成分解析(ブラインド源分離)を活用して測定データの複雑さに対応する工夫が肝要であった。 そこで、誘発磁場ゆらぎを構成する独立成分を選択するために、2つの異なる独立成分解析間の成分を対応付ける遷移行列を導入した。この遷移行列は確定信号を含むデータの独立成分解析と確定信号除去後のデータの独立成分解析を結びつけるものであり、これによって脳磁図データから誘発磁場ゆらぎを再構成することができるようになった。具体的には2Hzの正中神経刺激応答である64chの脳磁場データから第1次体性感覚野(cSI)と第2次体性感覚野(cSII)の部位が活動している誘発磁場ゆらぎを抽出し、それを逆問題として解けば、cSIとcSIIなる活動部位での脳内電流源データが得られた。これをフィードバックシステム論的解析手法でシステム同定すれば両活動部位間のインパルス応答を求めることができた。このことは誘発磁場ゆらぎに含まれる動的情報を脳内通信なる形として検出したことを意味する。
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