近年、ベイズ統計学(Bayesian Statistics)は、医学・薬学分野における実験・臨床試験のデータ解析に頻繁に用いられている。しかしながら通常、実験・臨床試験の計画は頻度論(いわゆるフィッシャー・ネイマン・ピアソン理論)の統計学に基づいて行われており、計画から解析・解釈までをベイズ統計学に基づいて行うという試みはほとんどなされていない。本研究の目的は、ベイズ統計学の最大の利点である一貫した論理に基づいて臨床試験の計画から意思決定までを実施する医療技術評価の新規方法論を開発することである。本研究の最終目標は、臨床科学に最先端の統計科学・科学哲学の思想を導入することである。本研究では、臨床試験の新しい方法論を確立し、臨床的意思決定におけるベイズ流アプローチの有用性を探ることが主となるが、その方法論は現在の頻度論アプローチ中心の臨床試験の方法論を大きく変える可能性を秘めている。本年度の主な成果は以下のとおりである。 1.ベイズ流デザインに関する研究:2項エンドポイント単群臨床試験について、デザインから解析まで一貫したベイズ統計学に基づく標本サイズ決定(解析事前分布とデザイン事前分布の導入)、中間モニタリングと標本サイズ選択(予測確率の利用)を考案し、Statistics in Medicine誌に公表した。 2.新規デザイン(上記)の標本サイズ決定に関する汎用的プログラム(Rライブラリ)を開発した。
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