2009年に発生した新型インフルエンザに対しては、日本ではおよそ5000カ所の医療機関に対して定点観測が行われてきた。この標本抽出法は定点に診察に来た人の診断に基づき、厳密にはインフルエンザ様疾患として記録されている。また、5000カ所の観測点の内訳もおよそ3000の小児科定点と2000の内科定点となっていて、記録された標本が日本全体を対象とした無作為抽出とは見なせない欠点を持っている。受診する医療施設は成人は主に内科、未成年は小児科であるが、性および年齢別にデータを捉えれば、そのカテゴリ内では無作為に定点に受診に来たものと考えることが出来る。データはインフルエンザ様疾患と診断されたケースだけであるので、カテゴリ内の感染比率の推定は出来ないが、男女の感染比率については推定が可能である。本研究ではカテゴリ内での標本抽出をポアソン標本抽出と考え、感染の性差についての研究を行った。母集団のカテゴリ毎に人口の男女比が異なるので、その比率を調整し、感染の性差の分析を行った。その結果未成年では女性の感染率に対する男性の感染率の比率がおよそ1.1倍であることを示した。このことは未成年における免疫力に関しては男子が女子の劣ると考えることができる。成人に対しては、その関係が逆転し女性の感染が男性より高いことが見かけ上で示された。この現象は人間の社会行動が混入し、例えば女性は感染した子供からの家庭内感染が多い、あるいは男性は仕事の関係で診察にゆけない、また不顕然感染が多く症状がでにくいなどの議論ができる。今後の研究課題である。質的変量のパス解析についてはエントロピー相関係数および決定係数に基づいて研究中である。
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