研究課題
2009年の新型インフルエンザはメキシコで発生し、世界中に感染が拡大した。日本にはインフルエンザ監視システムがあり、全国で小児科定点およそ3000カ所、内科定点およそ2000カ所で患者報告を週単位で行っている。2009年7月から2010年3月までの報告数およそ200万人分のデータを性年齢別に集計したデータを基に、女性に対する男性の感染比率を19個の年齢群に関して比較した。この監視システムによるサンプリングはポアソンサンプリングと見なせ、19個の年齢群の男女の母集団の大きさによる調整を行い、検定を行った結果、未成年では男性の感染率が高く、成人は女性の感染率が高いと有意水準0.05で統計的に判断された。この検定では年齢群の人口調整も行い、観測されたインフルエンザ様患者数の男女比に基づく方法を提唱し、その検定統計量の漸近的な性質の導出も行った。年齢群の多重比較は保守性の強いボンフェロニ法を用いて行い、性差比較で確度の高い結果を得た。未成年のインフルエンザウイルスへの暴露は同一年齢群で男女は等しいと考えられ、この感染率の差は生物的な意味での男女差と判断された。成人の場合は男女の社会的および文化的な活動がインフルエンザウイルスへの暴露に与える影響の交絡が否定できない。今後の感染症データ解析では注目する必要のある問題点と考えられる。最近注目され始めた性差を考慮したワクチン計画に影響を与える研究成果であり、ワクチン応答の臨床研究に繋げることを計画している。比較的に容易に行える研究として、ツベルクリン反応の臨床研究を行う予定である。この研究成果は論文Eshima, et al.PLoS ONE, 2011,6,4,e194092011で発表した。また、読売新聞朝刊2011年8月14日14面(医療・健康)で研究成果が報道された。
2: おおむね順調に進展している
日本のインフルエンザサーベイランスシステムのよって得られたインフルエンザ様患者数のデータに基づいたデータ解析で、感染の性年齢差を統計的に示すことができ、成果を論文としてまとめることができた。
一般の感染症のデータ解析で性年齢によう感染の特徴を統計的に明らかにする計画である。また、因果関係の分析でパス解析の統計手法を開発する研究へ進める予定である。
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PLoS ONE
巻: 6 ページ: 1-7
e194092011
http://www.med.oita-u.ac.jp/IS/eshimahome.htm