研究課題
本年度は日本国内の主な感染症について、国立感染症研究所公開のデータに基づいて、感染の性および年齢差についての研究を行った。小児感染症では咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、水痘、手足口病、 伝染性紅斑、突発性発疹、百日咳、ヘルパンギーナ、流行性耳下腺炎の過去10年間の感染者数データに対して相対リスク(発生比率)を用いて解析を行った。年齢および男女に関しては人口が異なるので、その人口比を調整した統計量を用いた統計解析法を提案した。男女および年齢に対しての比較し、一般的な傾向として、未成年は男児の方に感染率が高いが、その関係が成人後に逆転することを突き止めた。この解析はクロスセククショナルであるので、断定的に因果関係を示すものではなく、男女および年齢による社会での行動や習慣の因子が交絡することを考慮する必要がある。例えば、男児は女児より活発に戸外で活動しているとか、あるいは成人後には女性は主に家庭にいて、家族や子どもののケアに当たる役割を担っているというような点である。 しかし、手足口病、伝染性紅斑、百日咳、流行性耳下腺炎では思春期あたりで、女性の感染者が男性を上回る現象がみられる。また、腸管出血性大腸菌感染症でも同様の現象である。特異な例ではマイコプラズマ肺炎は70歳以上の高齢者を除き女性に感染者の報告が多くみられる。これらのことより、免疫応答やホルモンなどの差により、感染の性年齢差が起こっていると仮定することができ、本研究では臨床的な研究への橋渡し的な研究成果を上げた。今後の臨床的研究の方向性としては、性年齢差に配慮した研究が必要になると考えられる。とくに臨床試験では、単純な二群比較研究ではなく、性別も入れた層別試験が重要と思われ、本研究成果は意義ある結果を示したと考えられる。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLoS ONE
巻: 7, 7, e442261
DOI:10.1371/journal.pone.0042261