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2011 年度 実績報告書

非定常時系列に対するパターン・エントロピー時系列による解析と応用

研究課題

研究課題/領域番号 22500262
研究機関福岡県立大学

研究代表者

石崎 龍二  福岡県立大学, 人間社会学部, 准教授 (90265017)

キーワード非定常時系列 / エントロピー / 時系列分析 / 揺らぎ解析 / カオス
研究概要

為替レート、株価などの金融・経済データは、非定常で複雑な時間変動を示し、統計的な特徴づけが困難である。複雑な時間変動をする非定常時系列には、多くの情報が含まれており、いかしにして有益な情報を引き出すかが重要である。私たちは、ラットの脳波について、パターン・エントロピー時系列法という独自の解析手法による分析を行ってきた。ラットの脳波は非定常な時系列であり、金融・経済データに対してもパターン・エントロピー時系列法が有効であると考え研究を続けている。
平成22年度の研究では、為替レートや株価の1次元時系列データについて、パターン・エントロピー時系列法を使って期間別の変動の複雑さの定量化を行った。平成22年度ではドル円為替レートの1次差分を取って分析を行ったが、平成23年度の研究では、値の差ではなく変化率の変動を調べるために、ドル円為替レートの対数差分を分析した。ドル円為替レートの対数差分から得られたパターン・エントロピー時系列について、期間別のパターン・エントロピーの変動の比較を行った結果、フラット相(レートがほぼ平らに動く期間)に比べてバブル相(バブルの発生と崩壊がみられる期間)の方が、明らかにパターン・エントロピー値が高く、その高い値が長く続く特徴がみられることがわかった。さらに、複数の外国為替レートの対数差分の時系列についても分析を行った。その結果、複数の外国為替レートの対数差分から得られたパターン・エントロピー時系列においても、サブプライムローン問題やリーマン・ショックが起きた後の長期に渡ってパターン・エントロピーが高い値が続く特徴があることがわかった。また、1次元の単峰写像から生成されるカオス時系列に対するパターン・エントロピーの性質を調べた結果、カオス時系列に対するパターン・エントロピーの生成速度は、リアプノブ指数の大きさと非常に強い相関があることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

下記のようにパターン・エントロピー時系列法の理論的な基礎づけと応用の研究が順調に進んでいる。
(1)パターン・エントロピー時系列法の理論的な基礎づけ
ロジスティック写像やテント写像などから生成されるカオス時系列をパターン・エントロピー時系列に変換し、パターン・エントロピーの統計的性質を調べた。その結果、カオス時系列に対するパターン・エントロピーの生成速度は、軌道不安定性の指標となるリアプノフ指数の大きさと非常に強い相関があることがわかった。パターン・エントロピーは、各時刻での時間変動の不安定性を表わしていると考えられる。
(2)パターン・エントロピー時系列法の応用
これまでの2年間の研究により、ドル円為替レートの対数差分から得られたパターン・エントロピー時系列から、期間別の時系列の変動の不安定さを表せることがわかってきた。さらに複数の外国為替レートの対数差分から得られたパターン・エントロピー時系列により、サブプライムローン問題やリーマン・ショックが起きた後の長期に渡ってパターン・エントロピーが高い値が続く特徴があることがわかった。1次元時系列の場合、パターン・エントロピー時系列を構成する場合にチャンネル数の設定に難しさがあったが、複数の外国為替レートの対数差分から得られるパターン・エントロピーは、チャンネル数を固定して計算できるメリットがあり、より実用性の高い方法を見出すことができた。以上のように、為替レート、株価などの金融・経済データの期間別の変動の不安定さを分析する新しい手法としてのパターン・エントロピー時系列法を着実に構築しつつある。

今後の研究の推進方策

現在、研究は順調に進んでいる。以下の点に注意しながら研究を推進する。パターン・エントロピーの値は、2値化する場合の閾値、チャンネル数、ウインドウ幅の3つのパラメータにより決定される。今後、パターン・エントロピーのチャンネル数、ウインドウ幅依存性について更に詳細な考察が必要である。これまで、1次元時系列から構成されるパターン・エントロピーと複数時系列から構成されるパターン・エントロピーについて研究を行ってきた。いずれも期間別の時系列の変動の不安定性をよく表していることがわかってきた。しかし、パターン・エントロピーを構成する場合、1次元時系列と複数時系列とでは、チャンネル数の意味が異なるために、単純な比較ができない。1次元時系列と複数時系列の分析法の違いを考察する。また、1次元時系列や複数時系列から構成されるパターン・エントロピー時系列で、高い値が続く期間では何が起きているのかについて考察を進める。複数時系列の場合は、複数の為替レート間の相関とパターン・エントロピー時系列との間の関係に着目する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] 外国為替レートにおける1次元時系列と複数時系列のパターン・エントロピーの比較2012

    • 著者名/発表者名
      石崎龍二
    • 雑誌名

      統計数理研究所協同研究リポート「経済物理とその周辺(8)」

      巻: 271 ページ: 78-84

  • [学会発表] 複数為替レートの変動とパターン・エントロピー2012

    • 著者名/発表者名
      石崎龍二、井上政義
    • 学会等名
      日本物理学会第67回年次大会
    • 発表場所
      関西学院大学
    • 年月日
      2012-03-25
  • [学会発表] 外国為替レートの変動とパターン・エントロピー2012

    • 著者名/発表者名
      石崎龍二
    • 学会等名
      統数研・共同研究集会「社会物理学の展望」
    • 発表場所
      統計数理研究所立川キャンパス
    • 年月日
      2012-01-07
  • [学会発表] 非定常時系列のパターン・エントロピーによる特徴づけ2011

    • 著者名/発表者名
      石崎龍二、井上政義
    • 学会等名
      第117回日本物理学会九州支部例会
    • 発表場所
      佐賀大学
    • 年月日
      2011-12-03
  • [学会発表] 株株価・為替レートにおける複数時系列のパターン・エントロピーの統計的性質2011

    • 著者名/発表者名
      石崎龍二
    • 学会等名
      日本物理学会「2011年秋季大会」
    • 発表場所
      富山大学
    • 年月日
      2011-09-22
  • [学会発表] 株価・為替レートにおける1次元時系列と複数時系列のパターン・エントロピーの比較2011

    • 著者名/発表者名
      石崎龍二
    • 学会等名
      統数研・共同研究集会「経済物理学とその周辺」2011年度第1回研究集会
    • 発表場所
      統計数理研究所立川キャンパス
    • 年月日
      2011-09-08

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公開日: 2013-06-26  

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