株価収益率のボラティリティは、正の収益率より負の収益率が生じた翌日により上昇することが経験的に知られている。オリジナルなGARCHモデルはこのボラティリティの非対称性を捉えることができない。そのため、ボラティリティの非対称性をGARCHモデルに取り入れたモデルとしてQGARCH,GJR,EGARCHモデル等が提案されている。これらのモデルはボラティリティプロセスが多項式で表されている。非対称性を取り入れる方法は多項式以外にも考えられるので、本研究では有理関数である分数関数を利用して非対称GARCHモデルを構築した(R-GARCHとする)。R-GARCHモデルのパラメータ推定にはベイズ推定を用い、多次元スチューデント分布を提案分布とするMetropolis-Hastings法によってマルコフ連鎖モンテカルロ法を実行した。このマルコフ連鎖モンテカルロ法の有効性を測るため、サンプリングされたデータの自己相関を測定した。その結果、自己相関は非常に小さく有効性の高い手法となることがわかった。また、本研究で提唱する非対称GARCHモデルの有効性を検証するため、東証株価に対してパラメータ推定を実行し、株価データへの当てはまり具合を情報量基準であるAICとDICによってその他のモデルと比較した。その結果、対称なGARCHモデルとの比較ではR-GARCHモデルの方がいつも良いという結果となった。また、非対称モデルであるQGARCH,GJR,EGARCHモデルとの比較では、利用する株価データによってR-GARCHモデルが一番データにフィットする場合もあれば、その他の非対称GARCHモデルがよりデータにフィットする場合もあるという結果となった。これは、いつも特定の非対称GARCHモデルが良いという訳ではなく、株価データによって一番フィットするモデルを選ぶべきであることを示している。
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