本研究の目的は,有向グラフのノード間の様々な関連性を考慮したグラフ構造を解明することである.そのために,まず平成22年度にてノード間の辺の向きの状況から,入力及び出力の中心となるノードの導出,また,入力側と出力側を繋ぐ役目を果たす中継ノードの導出を行った.23年度では,これらのノードを基とした有向グラフのノード間のクラスタリング手法を提案することができた.そこで,24年度(最終年度)では,構築したノードクラスタリング法の検証をまず行い,ノードクラスタリング法にさらなる条件を付加させることにより,有向グラフの縮約化を行うことが可能となった.本研究で提案できた縮約化法は,今までの既存研究の縮約化法とは全く異なり,ノード間の依存関係と重要度の双方を考慮したものである.したがって,縮約化されたことによって生成された新たなグラフは,与えられた有向グラフの最終的なフレームと言うべき骨格と見なすことができるのである.この手法のアプリケーションとして,実際に代表者が作成した確率の講義に対するテキストシラバスからグラフィックシラバスの作成を行った.グラフィックシラバスとは,「授業のおける教授項目間の関連性を図示化する流れ図」をグラフィックで提示するものである.このグラフィックシラバスを適用することにより,教員,学生にとって有益な情報を得ることができるのである. また,グラフ構造を解析する1つの指標として,有向グラフ自体がもつグラフ構造の複雑度を表す指標についても提案することができた.本申請研究では,与えられた有向グラフに対する縮約化された有向グラフの縮約率を表す尺度を導出するまでには至らなかったが,この内容は今後の研究として取り組む予定である.
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