研究課題
今年度は、昨年度に引き続き世界各国の金融市場および経済環境の把握に努めた。昨年度来収集した先進国、新興国、中南米などの経済統計や金融市場価格などさまざまな時系列データについて、本研究に妥当なデータかどうかをていねいに確認しながら、インフレ率の理論的研究や過去のさまざまな時代の実証研究を検討した。特に、2008年秋における世界的金融危機の勃発以降、企業業績やインフレ率をはじめとする主要各国の経済統計は従来の景気循環にないスケールで急激に悪化したことや、IT技術の発展により金融システムのグローバル化が進み、情報伝達の高速化も伴って世界各国の経済環境や経済構造が互いに強く影響を及ぼし合うようになってきていることから、金融危機を境に世界の経済構造が大きく変化したことを確認した。そこで、今年度は研究の焦点を最近の世界的金融危機前後の期間に絞ることにした。また、本研究の研究体制において予備的な共同研究として開発した、Box-Cox変換と時変分散モデルを利用したトレンドモデルに基づく価格指数の構築法を適用して、日本の信用リスク指数を作成し、日本の株式・債券・為替市場との変動の因果関係を解析することで、米国サブプライム危機の日本への波及効果を検出した(Tanokura et al.2012)。指数の構築法をさらに改良して世界各地域の信用リスク指数を作成し、パワー寄与率を適用することで欧州危機の拡大と長期化を示し、成果をwebで公開した。日本におけるデフレの長期化懸念や新興国諸国の経済成長によるインフレ懸念、またエネルギー資源価格の変動によるインフレ率の国際的な連動性の高まりなどから、バブルあるいは金融危機と資産価格やインフレ率の変動の関係に焦点を当て、バブル(あるいは危機)のモデル化の検証を開始した。この検証をもとにインフレ率の変動メカニズムのモデル化へ研究を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画に沿って過去のさまざまな時代のインフレ率の変動の検証を重ねてきたが、金融危機を境に世界の経済構造が大きく変化したことを確認した。そこで、バブルあるいは金融危機と資産価格やインフレ率の変動の関係に研究の焦点を絞って、インフレ率の変動メカニズムのモデル化の検討を進めている。
最近のバブル(あるいは危機)のモデル化に関する先行研究が多く出ており、その検証からヒントを得てインフレ率の変動メカニズムのモデル化へ研究を深めていく。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
Economic Time Series : Modeling and Seasonality : W.R.Bell, S.H.Holan and T.S.McElroy (eds.), Chapman & Hall/CRC
巻: (論文集書籍のため該当なし) ページ: 359-380
http://alphal.ism.ac.jp/statfirm/jp/indexj.html
http://alphal.ism.ac.jp/statfirm/en/index.html