研究課題/領域番号 |
22500272
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
上田 一義 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (40223458)
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キーワード | コンピュータシミュレーション / 環変換 / グルコース |
研究概要 |
本研究は、グルコースの環構造変換過程の全貌を、量子化学的計算手法を用いて明らかにすることを目的とするものである。この研究は糖の中で最もポピュラーなグルコースについて、未だに明確でないグルコース環の立体配座について定量的に明らかにするもので、糖化学の最も基本的な基礎情報を与えるものとして学術的に重要であるのみならず、実用的にも低炭素化社会実現に向けてのグリーンエネルギーの実用化研究の一つである、セルロースを酵素分解してエネルギー資源として利用する際の酵素設計や反応の効率化等を図る上で重要である。 今年度は平成23年度の研究計画に基づき、グルコースの環変換過程を地球儀状に表すことのできる、Clemer-Pople図の南半球部分における環変換過程について検討した。すなわち、ねじれ配座からもう一つのイス型構造である1C4に至る経路とその構造、さらに遷移状態におけるエネルギー障壁の高さを求めた。その結果、新たに3本の経路が見出された。 また、環の配座転移は4C1から"ねじれ配座"に至る環変換経路のみではなく、"ねじれ配座"間の転移も存在する。すなわち、、Clemer-Pople図で説明すると、φ=180のB3,oから、赤道面を通ってφ=210の1S3へ至るような経路である。このような変換経路については現在解析中であり、次年度の研究計画とあわせてグルコースの環変換過程の全解明を完成させる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画にある、ねじれ配座からもう一つのイス型構造である1C4に至る経路については新たに3本の経路が見出され、計画以上の進展を見た。一方、4C1から"ねじれ配座"に至る環変換経路については現在解析中であるため、概ね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、昨年度に得られたイス型構造である1C4に至る経路についての結果を論文にまとめ公表する。その後、研究計画どおりに、まずは4C1から"ねじれ配座"に至る環変換経路について解析を行い、その経路を明らかにする。また、予定しているセルラーゼ酵素の設計や反応の効率化を図ることを目的とした分子改変の計算を、これまですでに求めている遷移状態構造を用いて行っていく予定である。
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