第三の生体鎖である糖鎖は,発生・分化,免疫応答など様々な生体反応において重要な機能を有し,細胞間認識や細胞間相互作用などに深く関与していることから,ポストゲノム研究として注目されている. また,新薬開発の初期段階では,様々な生理作用に関わる受容体を標的とし,標的受容体に対して活性が未知の化合物の中から活性がある可能性の高い化合物 (ヒット化合物) を選択する.このとき,類似構造を持つ化合物を中心に標的受容体に対しての活性度が調査される.本研究では機械学習モデルであるサポートベクターマシン (SVM) を用いて,プロスタグンジンE2受容体2(EP2)とスフィンゴシン1リン酸受容体4(S1P4)に対して阻害活性の予測を行った。さらに予測された化学構造から活性に関係する部分構造を詳細に解析した. 本研究で構築された阻害活性予測SVMの予測精度はEP2では79.0%,S1P4では71.0%を示した.EP2の予測後の部分構造の出現率による比較では,True Positive(TP)とTrue Negative(TN)に現れる出現率と類似した部分構造がFNに現れた.現れた部分構造は窒素,酸素やCH2を中心に組み合わされた部分構造であった.S1P4においてもEP2と同様にTrue Negative(TN)とFalse Negative(FN)の部分構造の出現率が類似しており,CH2の部分構造が組み込まれた構造をとっていた.従って,FNに出現する部分構造はTNが持つ部分構造であるために阻害活性を持つ化合物がFNとなることが推測された.また,FNの化合物とTPやFNの化合物の部分構造の組み合わせを比較することによりTPとTNの化合物が持つ部分構造と異なった特徴的な構造を抽出した.現在,糖鎖構造に関しても同様の解析を行っている.
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