【実験データの定量化とシステム情報の抽出】Shootinlによる不連続で揺らぎのある能動輸送だけでなく、Jip1による連続的な能動輸送に関して、突起先端の成長円錐における減衰過程を定量化した。また、外部誘導因子によってShootinlの突起先端での減衰過程がどのように修飾されるか定量化し、その効果を現在の数理モデルに導入した。一方、成長円錐の形状制御を行うRhoファミリー低分子量Gタンパク質(Cdc42/Racl/RhoA)について、これまでのような形状エッジ周辺だけでなく、エッジより深部までを含めて活性度を定量化した。その結果、これまで特徴がないように思われたCdc42の活性度が細胞の深部において非常に特徴的な変化を示すことが明らかとなった。この観察結果は、Hemlを使用した他の研究グループの結果と関係すると考えられる。 【数理モデルの発表と解析】定量データに基づく数理モデルを完成し、論文誌に発表した(Mol.Syst.Biol.2011)。この論文では、多くの観察結果を再現する頑健なモデルであることを述べているが、なぜこのモデルが極性形成を生み出すかについての数理的な議論は行っていない。ゆえに、22年度は数理モデルを解析し、まず極性形成が発生するための条件を数理的に導き出した。その条件は突起の長さとしての閾値で表現されるが、時間的に固定ではなく状況によって変化する。次に、その閾値を越えたタイミングでShootinlの輸送がどのようなものであったかを解析した。その結果、極性形成の瞬間にたまたま大きな能動輸送が起きていることを示した(論文作成中)。
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