熱ショック蛋白質(HSPs)の誘導によって脳を保護するという仮説を新規創製分子(PED1)によって証明することを目的とする。ヒト網膜色素性上皮細胞ARPE-19細胞及びマウス海馬ニューロン由来のHT22細胞を主に用いた。22年度の実施計画の4項目にわけて詳述する。 1)ハイドロキノン(プロドラッグ)からキノン(ドラッグ)への変換機構:化学では、ハイドロキノンからキノンへの変換はpara及びortho異性体でおこり、metaでは起こらないとされる。この傾向は、HT22細胞などでの細胞死の抑制作用、及び転写エレメントARE活性化の強度と殆ど一致する。従ってPED1のニューロン死の抑制はキノンへの変換を介していることを示唆した。 2)マイクロアレー解析をもとに、PCRなどを用いた遺伝子発現解析:ARPE-19及びHT22細胞の両方を用いてマイクロアレー解析を行い、PED1はHSPs及びPhase2酵素群を誘導することを証明した。PCR及びウエスタンブロットを用いて確認した。 3)Keap1/Nrf2経路及びHSP90/HSF-1経路の活性化の証明:PED1がPhase2酵素のマスター調節因子であるNrf2、及びHSPsのマスター調節因子であるHSF-1が核内にPED1が促進することを証明した。 4)酸化ストレス及びポリグルタミンによるニューロン死の抑制:HT22ではPED1は高濃度グルタミン酸による細胞死を濃度依存的(IC50=7・M)に抑制した。またARPE細胞及び光受容体細胞661WではPED1が過酸化水素による細胞死を濃度依存的(IC50=5・M)に抑制した。 2回のリプトン研究室での滞在によって、3)及び4)の実験及び、ラット皮質ニューロンでの保護作用を証明した。またこの分野のパイオニアである名古屋大学・内田教授及び弘前大学・伊東教授の講演会を岩手医大で8月に開催した。
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