平成24年度は、主に以下の二点につき、研究を推進した。 日常生活では、物体に対し何らかの一連の操作を加えることが多いが、そのような機能は認知症患者等で損なわれることがある。物体に対し一連の操作を行うモデル課題として新奇課題・形操作課題を考案し、ニホンザル2頭に対し訓練を施した。訓練には2年足らずを要したが、成績がある基準に達したので、そのパフォーマンスを解析した。特に、サルが操作順序を事前に計画しているかが行動に反映されているかどうかに着目し、解析を行った。課題で要求される操作は最短で2手であるが、3手以上かかった試行における反応時間を解析したところ、1手目で最短手操作ではない操作を行った後の2手目の反応時間は有意に伸びず、また、2手目でリカバリー操作を行うことはほとんどないことが判明した。このことは予め計画した2手操作を一気に行っていることを強く示唆している。 一方、生物の運動は神経系→筋・骨格系→環境→神経系…というループの中での安定な状態(グローバル・エントレインメント(以下GE))であるという考えが近年提唱されている。この考えをリハビリテーションに応用し、障害者が新たなGEを発見することで機能を回復するという新たな訓練法の確立を目指し、新奇ヒト用オール漕ぎ課題を考案した。課題デバイスでは、オール漕ぎ軌道制限の有無やオールへの負荷の有無がコントロールでき、一定リズムでオールを漕ぐには、被験者は新たな体の使い方を発見せねばならない。ここでは健常被験者を用い、運動の加速度変化と角躍度の分布を検討した。トレーニングの結果、不安定な周期動作が滑らかな持続性の高い安定性動作へと変化する事例が観測された。一方で、予め安定性の高い周期動作を有している場合には、外部介入がある間だけ異種のGRが現れるが、介入措置が解除されると元の様相への戻ることが観測された。
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