研究課題
RNA修飾因子PTBは中枢神経系において未分化細胞集団に発現しており、RNA recongnition motifを介して標的pre-mRNAのpolyprimidine領域に結合してmRNAのスプライシングを制御している。近年、転写調節のみならずRNA修飾による細胞分化制御が重要な役割を担う事が知られており、これまで不明の点の多かったスプライシング等のRNA修飾による神経分化制御の機構解明を目的にPTBコンディショナルノックアウトマウス(cKOマウス)を作製した。(1)Nestin-Creマウス及びEmx1-Creマウス(神経組織特異的にCreを発現)との交配により、PTBが脳室周囲に存在する未分化細胞(Radial glia)の細胞間接着や細胞極性の維持に重要な因子である事を見出した。PTB欠損マウスの大脳皮質領域において胎生14.5日前後からRadial gliaの形成するAdherence junctionが消失し、それに伴って神経分化亢進および神経幹細胞の枯渇が起こる事が示された。また生後には重篤な水頭症を発症する事を見出した。(2)神経系ではPTBのパラログ遺伝子であるnPTBが発現しておりPTBと相補的に働く可能性が示唆される。そこでnPTB cKOマウスを作製した。Emx1_Creマウス(大脳皮質領域のみでCreを発現)との交配により得られたnPTB cKOマウスはPTB cKOマウスと同じく水頭症様の症状を呈した。今後は交配によりPTB/nPTB double cKOマウスを作製しより詳細な機能解析を進める。現在、PTB cKOマウス由来の神経幹細胞集団のRNAを回収しエクソンアレによる標的因子の検索を試みており、幹細胞の極性維持に関わる分子メカニズムに関して解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
発生工学的手法を用いた遺伝子改変マウスの作出を可能としており、当初の計画に沿って生体レベルでの解析を進めている。これまでにRNAスプライシング調節因子であるPTBの欠損が、神経幹細胞からの分化異常を引き起こし,個体レベルでは水頭症を発症する事を明らかとしている。RNAスプライシング異常が個体発生/神経発生にどのような影響を及ぼすのか?その知見は未だ少なく、PTBをはじめとした本研究分野の更なる発展が期待される。
RNAスプライシング機構が個体発生/神経発生にどのように貢献しているのか、またその破綻がどのような異常を引き起こすのか、PTB/nPTBのdouble cKOマウスを作製しその解析を進める事で明らかとしてゆく。またPTB欠損細胞を用いて、エクソンアレイによる網羅的解析を行いこれまで関与が知られていなかった新たな分化制御因子の同定を試みる。
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