ヒトは他者の運動を観察している時、どのようにすればその運動が自己の運動として実現できるかどうか、その方略を理解することができる。これは、他者運動に関する視覚的情報を、自己の運動制御に関する脳内メカニズムを利用して処理することで、その運動を行うのに必要な運動指令を計算しているからだと考えられている。このように、自己の運動を生成する機能のみならず、他者運動に関する視覚情報の処理にも関わっている脳内メカニズムを、ミラーシステムと呼ぶ。本研究は、ミラーシステムによる他者運動の視覚情報処理が、ある運動を学習した結果獲得した自己の運動表象(自己の運動を生成するための神経ネットワーク)に応じて変化するのか、その可能性を検証することを目的とする。 本年度は交付内定通知が年末まで遅れたため、実験に関連する機材や物品の購入、実験環境の整備に多くの時間を費やした。したがって、当申請研究の計画に沿った実験には現状、取り掛かることができていない。また、交付された研究費では当初予定していた主要装置を購入することができなかったため、研究計画を大幅に見直し、当初の目的に則した形で別の実験を考案している。
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