研究課題/領域番号 |
22500293
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
富樫 英 神戸大学, 医学研究科, 助教 (90415240)
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キーワード | シナプス形成 / 細胞接着 / ネクチン |
研究概要 |
シナプスは神経伝達の行われる部位であり、記憶に密接に関連して可塑的な変化の起こる接着構造である。申請者はシナプス形成における細胞接着分子カドヘリンの重要性を世界に先駆けて示し、さらに軸索・樹状突起間の識別に細胞接着分子ネクチンがカドヘリンとともに必須であることを解明した。海馬では歯状回より伸びた苔状線維がCA3領域の錐体細胞に対してシナプスを形成する。ネクチンの裏打ち分子であるアファディンのノックアウトマウスを作製したところ、このノックアウトマウスの海馬ではシナプス形成が顕著に減少していた。苔状線維内のシナプス小胞の構成分子、またCA3錐体細胞の受容体集積に関わるPSD-95等の足場分子の集積が低下していた。しかし、アファディンがシナプスの形成においてどのようにこれらの分子の集積に関わるのかは不明である。これまでに、アファディンの遺伝子改変マウスより海馬初代培養細胞を作製したところ、これらの神経細胞では軸索と樹状突起間の接触が減少し正常なシナプスが形成されなかった。アファディンがノックアウトされた培養神経細胞では細胞間接着に関与する分子について発現と局在の低下がそれぞれ見られた。現在、アファディンとこれら分子の相互作用について検討を行っている。アファディンノックアウトによって変化が見られた分子については培養神経細胞を用いて過剰発現とノックダウンの実験を行い、アファディンとどのような協調的な機構によってシナプス形成に関与しているのかを検討している。また、ネクチン・アファディンの機能を解析する中で、異なるネクチンを発現する二種類の細胞がモザイク様の細胞選別に関わることを見出し、論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アファディンによるシナプス形成の機構が順調に理解されるのと同時に、シナプス形成においてアファディンと協調的に機能する分子が多数明らかにされつつあり、細胞間接着とシナプス形成の分子機構について当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
アファディンをノックアウトした培養神経細胞では正常なシナプス形成が減少していた。そこで、シナラス形成における細胞間接着の働きを明らかにする目的で、神経細胞をGFP等の蛍光タンパクで標識し、シナプス形成過程を顕微鏡下で経時的に観察を行う。また、細胞接着分子等のGFP融合分子を神経細胞に発現させ、同様の実験を行うことにより、シナプス分子と接着分子の機能を明らかにする。
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