研究課題/領域番号 |
22500294
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
甲斐 信行 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (50301750)
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キーワード | 対応法則 / 側坐核 / イムノトキシン / ドパミン / 神経行動学 |
研究概要 |
動物の選択行動は目的を果たすための重要な手段で、その場の状況判断に学習経験がつけ加わることで、より洗練された適切な行動を取れるようになる。しかし、学習の繰り返しが選択行動の発達に果たす役割については具体的な解明は進んでいない。そこで本研究では、学習の繰り返しが選択行動の発達に及ぼす影響の程度を明らかにすると共に、それに関わる脳部位を見いだすことによって、選択行動の発達をうながすしくみの解明をめざした。動物の選択行動には、過去の研究からマッチングの法則と名付けられた規則性が見いだされていて、二つの選択肢間の反応頻度の割合は、各選択肢から実際に得た報酬の割合に一致する事が知られている。本年度は、イムノトキシン細胞標的法を用いて側坐核コアでドパミンD2受容体を発現する神経細胞を選択的に除去したラットに、餌を報酬にしたレバー押し反応を学習させて、マッチングの法則に従った行動(マッチング行動)に対照群とどのような違いがあるかを調べた。その結果から、側坐核コアの神経細胞はマッチングの法則の発達に重要な役割を果たすことが示唆されたため、イボテン酸を用いて側坐核コアの神経細胞を除去したラットを新たに作成した。コアの神経細胞が除去された確認は、神経細胞特異的マーカーのNeuNに対する免疫染色を用いて行った。さらにこの動物を用いて、マッチング法則の発達過程を調べるための行動実験系の開発を新たに行い、発達を測定できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
側坐核コアのドパミンD2受容体陽性細胞の除去により、マッチング行動の獲得過程に遅れがあることを示唆する結果が得られたが、いったん獲得されたマッチング行動のパラメータは対照群との有意な違いは認められなかった。そのため、新たにコアの神経細胞を非特異的に破壊した動物を作成し、行動の獲得を調べるための新たな行動実験系を確立して解析を行い、興味深い結果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
側坐核コアの吻側と尾側で破壊の効果が異なる傾向が認められるかも知れないので、そのような場合はさらに吻側のみ、または尾側のみを破壊した動物で効果を比較検討し、機能分化があるかどうかを確かめる。また、側坐核コアに入力するドパミン入力がマッチング行動の発達に及ぼす役割についても検討を加えたい。
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