研究概要 |
本研究では,新生ラット摘出脳幹-脊髄標本を用いて,延髄吻側腹外側部のPhox2b陽性ニューロンが直接CO2濃度変化を受容するのかどうかを検証し,CO2感受性のイオン機構を電気生理学的,神経薬理学的,免疫組織学的手法を用いて明らかにする.23年度は,CO2感受性がPhox2b陽性細胞に対する直接作用の結果引き起こされるのかどうかについて検証をおこなった.新生ラット摘出脳幹-脊髄標本を用いて,延髄吻側腹外側部-腹側表面近傍のPhox2b陽性ニューロン(主にpFRG Pre-Iニューロン)からホールセルパッチクランプ法により膜電位を記録し,TTX存在下で高CO2(2%CO2→8%CO2)に対する応答を調べ,ニューロンのCO2応答に対する各種伝達物質(とくに関与が大きいと考えられるサブスタンスPとATP)のブロッカーの影響を検討した.サブスタンスP(NK1受容体)のブロッカーであるspantide又はL-703606,あるいはATP受容体ブロッカーであるMRS2179又はPPADSを前処理してもTTX存在下におけるpFRG Pre-IニューロンのCO2に対する脱分極応答は引き起こされた.さらに,シナプスからの伝達物質放出そのものを遮断する目的で,TTX+Cd2+溶液あるいは低Ca2+,高Mg2+(TTXおよびCd2+を追加)溶液に置換した後CO2応答を調べた.この場合にも,pFRG Pre-IニューロンのCO2に対する脱分極応答は抑制されなかった.これらの結果から,pFRG Pre-IニューロンのCO2感受性は,前シナプス要素の関与を必要としないこと,つまり直接,シナプス後膜の受容によることが明らかとなった.これら,CO2感受性ニューロンは,Phox2b陽性であり,血管に接触するようにして配置されていることが確認された.
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